息子が生まれたときに人並みの生活を送らせてあげたいと、学資保険へ入ることにしました。
まあ、浅はかな考えでした。WEBで検索してs生命へ登録。すぐに営業が飛んできました。
ファイナンシャルプランナーのNさん。50代前後のやり手といった印象です。
話が面白く、保険の世界をとてもわかりやすく説明してくれました。
そこで、共働き夫婦の我々の「ライフプラン」を作成しますと言われ、手取りや預貯金を正直に話してしまいました。
そういった事はある程度ぼやかした方が良いかもしれません(遅いけど)。
月額1万5,000円くらいの学資を想定して話をしていたのですが、
Nさんが「お二人での収入がこんなにあるのでしたら学資保険ではなく、こちらの保険をおすすめします」と「生前給付保険」を紹介してきました。
要するに、月額15,000円じゃなくて100,000円にして15年間貯蓄していきましょう!という話です。
55歳になったら解約できるという高すぎるハードル。
ちなみに我々夫婦の稼ぎは底辺に属します。
初めに月額150,000円のプランを提示され、いやいや無理ですよと言うと100,000円に減額したプランへ。
Nさんの表情が一瞬曇りましたが、150,000円取れると思っていたのか?
減額プランにする代わりに、掛け捨ての月額3,000円の別保険も勧めてきました。
喫煙者でないことが条件の安価な給与保証。
私が死んだら妻に毎月100,000円くらい入金されます。確か2年くらい。
実は私はNさんに圧倒されていました。普段は他人に呑まれてしまうことなどないのですが、断れなくなってしまっていました。
素晴らしい話術に引き込まれ、逃れる術を失っていました。
いやあ、本当にそんな人いるんですよね。
思い起こせば宗教的な魔法にかかっていました。
翌月から支払いがスタートしました。
当時の妻は育休中で、手取りはだいぶ減ってしまい家計は火の車。
契約した以上は逃れることのできない保険。
私は常に焦っていました。
子どもが生まれて穏やかに生きる風景を思い描いていたのに、支払いのことばかり考えるようになっていました。
わずかな貯金もどんどん目減りしてしまい、心の余裕が明らかになくなっていきました。
その頃、私の会社は震災の煽りを受けて窮地に陥っていました。
ある程度予想はしていましたが、給与の10%減額告知。
ここからさらに追い込まれるようになってしまいます。
毎月の10万円を確保するために、奔走するように。
借金をするべきか悩みましたが、愚の骨頂ですよね。
そんな折り、私が病気で倒れ1ヶ月以上入院して手術を受けました。
アレです、厄年です。
入院中も支払いに追われていました…。
内臓をひとつ失ってからようやく我に返りました。
解約しよう。
Nさんに電話をして、もう支払いを続けることができない旨を伝えました。
クライアントは自分なのに、かなりの勇気を必要としました。
2年と少し頑張りましたが、挫折しました。
大きな挫折。
すぐにNさんが飛んできて解約の手続きを行いました。
違約金が30万円以上ありました。
すぐに現金を下ろすとさらに10万円くらい追加で引かれるので、あと5年くらいは保険口座にプールしておかなければなりません。
無駄に現金を失ってしまいました。
Nさんが家に訪れたことを喜んだのは2歳になった息子でした。
無邪気に話しかけている姿が微笑ましい。
Nさんは抜かりがないので、子ども用のお絵かきセットをプレゼントして息子は大喜び。
さて、次の契約ですがとNさんは代替えのプランを提示してきました。
さすが。
ひと月に3万円なら支払えますと背伸びして話したところ、投資型の保険に切り替えましょう!と言われました。
これからジャンジャン儲けを出して行きましょう!と。
あの人たちは3万円というと、33,000円と少し上乗せした金額で話を勧めてきますので。
投資型保険って投資信託のことなので損失が出てしまうことも多いのでおすすめはしませんが、
もう破れかぶれの私は何も考えずにサインしてしまいました。
喪失感はしばらく続きましたが、徐々にメンタルは整ってきました。
なんだかんだで数年かかりましたが、その間に父親が亡くなったり、母親が脳出血で倒れたりでバタバタしていました。
コロナの時代がやってくる少し前、2018年だったような気がしますが、s生命から電話が掛かってきました。
新しい担当のFさんという方でした。
Nさんはどうしたのですか?と尋ねたら「退職しました」と。
顔合わせを兼ねてご挨拶に伺いたいというお話でしたが、お断りしました。
なんだか怒りがこみ上げて何とも言えない感情になってしまいました。
投資型保険に切り替えてからちょうど10年経過しました。
満期まであと15年くらい。先は長い。
投資は順調に増加していて、この10年でプラス130万円を超えたり超えなかったり。
非常に優秀で驚きですが、あの頃失ってしまった金額を補って余りある感じ。
この先はわかりませんが、どのような結果になろうともNさんに感謝はしないと思います。
出会いって大事ですが、選ぶことはできません。
あの時、学資保険でお願いしますと言えれば今のこの感情なんて持たずに生きてこれたと思っています。
誰にも言えない黒い感情の話でした。